壁にドンと手を当てる澪鵺。




「壁ドン・・・?」

「そうですよ」

「氷さんカベドンって」

「あの人は女性に縁がない人ですから、そういうのには弱いんです。
もしかして紅羽、“チュー”なら知っていますか?」

「チューなら、氷さんに教えてもらったよ。
よく意味はわからないけど」

「チューが今のキスのことですよ。
よくわからないなら、もう1回やりますか?」




答える間もなく、澪鵺は再び私の唇を、自分のソレで塞ぐ。




「・・・プハッ」

「プハッって・・・。
水から浮きあがったみたいな反応しないでください。
シチュエーションが台無しですから」

「だって・・・窒息死しそうで」

「紅羽、純粋すぎます」




ハハッと楽しそうに笑う澪鵺。

私を見て笑うけど・・・。

その目は、“私”は捉えていない。








「澪鵺、私を見てよ」




思わずそう、口走ってしまった。