氷さんは片付けが出来ない人。

テーブルの上には、カップ麺だの栄養ドリンクだの沢山置いてある。

足元には、血が付いた黒い仕事用の服が脱ぎ散らかされている。

家宅捜査とか来たら、一発アウトだ。




「・・・ん」



手渡してくれたのは、私のお目当て。

太い黒縁眼鏡に、黒いゴム。



「ありがと氷さんっ!
ちょっと洗面所借りるねっ」

「・・・おう」



洗面所の電気をつけた途端、私は発狂した。



「きっ、きゃあああああっ!」

「うるせぇっ!」

「ひょ、氷さんっ!何ですかこれっ!」



洗面所には、水が溜まっていた。

その水の色は・・・赤。

殺し屋を辞めてから血を見なくなったから、つい驚いてしまった。




「あ?別に構わねぇじゃん」

「気になりますよっ!」

「昨日仕事の時、しくじってな。
帰って洗った時、ついたんだろうな」

「しくじった!?
大丈夫なんですか?」