「うるせぇっ!ぶっ殺されてぇか!!」




いきなり扉が開き、怒鳴り声。

目の前には、寝癖だらけの氷さんが立っていた。



和泉氷(かせん・ひょう)さん。

和泉は“いずみ”と読んでしまいそうなので、注意が必要。

顔立ちは整っているし、手足もスラリとしているんだけど。

他は全てダメダメ。

鳥がいつか巣を作りそうなモワモワしている癖が強い髪型に、よれよれの服装。

仕事の時やバーの時は、黒いお葬式にでも行きそうな服装をしているから、あんまり私服は見ない。

見ない方が良いと言うのが正しい。




普段は「殺し屋か?」と疑いそうな口調だが、寝起きとか仕事の時とかイライラしているときは、もう殺し屋口調。

下手するとナイフとかチラチラ見せてくるから、危ない。




「・・・んだよ、紅羽かよ」

「ね氷さん、お願いがあるの」

「んだよ、手短に話せ」

「太い黒縁眼鏡と地味なゴム、持っていないかな?」

「・・・ある」

「貸してっ!」

「・・・入れ」



ガシガシ髪をいじりながら、氷さんは中へ入る。

私も追って入る。