「あのっ、高橋くん……っ」


『なあ日高、わりぃんだけど、もう少し俺に付き合ってくんね?』


「えっ……?」



思いがけない高橋くんの発言に勇気をだして準備していた言葉が引っ込んでいく。
スマホを握る手にチカラがこもった。


高橋くん、どうしたの……?

声、元気、ない……?



『俺不安なんだ。受験……勉強できないから』


「…………」


『日高の声聞いてたら落ち着くからさ、日高さえ迷惑じゃなければ……』


「っ、迷惑なんかじゃないよ」



高橋くんの言葉を遮るようにわざと言った。
右手で持っているスマホに左手を添える。


一息ついて「迷惑じゃないよ」と、もう一度同じ台詞を繰り返した。


迷惑だなんて、そんな、とんでもない。


私も、高橋くんと話していたかったし、それにこんな弱々しい高橋くん初めてだから。


ほっとけないもの。



『サンキュー、日高』


「ううん。あっ、あのね今日ねネクタイの結び方を沙月ちゃんに習ってたの」


『ん……』


「でも全然うまくできなくって」


『ん……』



できるだけ受験に関係ないことを、楽しく話そう。笑って、明るい声で。不安で沈んでいる彼の心から曇り空をはね除けるように。


高橋くんにはたくさん助けてもらった。


転校初日に自己紹介できない私に助け船を出してくれて、クラスに馴染めないでいる私にたくさん話しかけてくれて、仲良くなってくれた。


だからね?


私も、高橋くんのチカラになれるならなりたいの。