昨日の幸せな出来事と、これまでのひとりぼっちの日々を思い出して比べてしまう。


昨日の出来事は夢なんかじゃないよね?


教室に行って、誰からも話しかけられなかったらどうしよう……っ?

昨日のみんなの優しい笑顔が悪魔みたいに怖い顔になったら……っ?


想像したら血の気が引いて来た。

……やっばい。足が震えて来たかも。


校門をくぐって、急に足取りが悪くなる。


ううっ、ちょっと不安が大きくなって来たかもしれない。
弱いなぁ、私。
もっと強くなりたいのに、臆病すぎる心がただの憶測だけでびびっちゃって、プラス思考になれない。



「あ……」



昇降口、下駄箱のところ。
そこに登校して来たばかりの沙月ちゃんの姿を発見した。


ど、どどど、どうしよう。

声、かけたい。だけど、なんて声をかければいいんだっけ?

えっと、どんな感じで?


緊張でいっきに頭が真っ白になる。
足が止まり、かばんの紐をこれでもかってぐらいに握りしめる。



「っ……んと……」



思考停止。まったく言葉が出てこない。
目の前に沙月ちゃんがいるのに、私は立ち止まったまま、動けずにいる。


なにもワードが浮かんで来ない。

もうだめだ、沙月ちゃんが行ってしまう。
そう、思った時。



「なにやってんだ、こんなとこで」

「た、高橋くん……!?」