「え!?転校しなくていいの!?」


「ええ、そうよ。優梨も親しい友だちができて転校したくないだろうし、もう、高校生だしね。お父さんと話し合って今回は単身赴任ってかたちにしようと思うの」



ストンと、肩の力が抜ける。

朝ごはんを食べようと手を合わせた直後、唐突にも父と母から話を切り出されたのだ。



「でもお父さん寂しくない?」


「隣の県だから、会いにくるし、来てくれるだろ?」


「……もちろんだよ」



微笑むと、お父さんも同じように笑みを返してくれた。

これでまた、心配ごとがひとつ減った。


大好きなみんなと、離れ離れにならずに済んだのだから。


結城くんが学校に来出してから一週間が過ぎた。


あれから私たちはより一層仲良しになったと思う。涙ばかりの出来事だったけれど、仲を深めてくれた出来事として私の記憶に刻まれている。


もしかしたら結城くんと沙月ちゃんの心にはまだ傷があるのかもしれない。


だけどそれ以上に"一緒にいたい"気持ちが大きくて、私たちの絆は繋がっているのだと思うんだ。


たくさん難しく絡み合っていた糸が解けていく。
そして私の中で残ったひとつの疑問。


私が勢いで言ってしまった告白は、高橋くんに届いたのだろうか……?


恋愛事情で一度絡まり合ったから、ほじくり返すようでとても言い出しづらい。


でもモヤモヤしてしょうがない。



「行って来まーす」



ローファーを履いて、家を出た。
季節もまた移り変ろうとしている。


朝の木漏れ日に見守られながら、最寄り駅までの道を歩いた。