健気に頑張っている彼女を見ていたら、なぜな心を突き動かされた。
俺も、頑張らなくちゃって考えさせられた。
理屈じゃなくて、そう感じたんだ。
誰も見ていないのに、黒板を毎時間綺麗にしたり、鉢植えの水やりをしたり。
別に先生から指示されたことじゃないはず。
なのになんでもない顔でこなしている彼女を見ると、とてもバカにできなかった。
……気づいたら好きになってた。
彼女がイメチェンしたときは他のやつらに取られるかもってすごく焦ったし、眼鏡を取ると可愛いことは俺だけが知ることだと優越感に浸っていたのに。
それだけ俺は彼女が好きだった。
俺を取り巻くみんなの感情にも勘づいていた。
沙月に恋心を寄せられていることにも気づいていた。そんなに鈍くない。
いつからだったか、俺は見えない薄い透明な壁を沙月の前につくった。
時折見せる熱い眼差しや笑顔、言葉が目についたから。
好かれていることが嫌なわけじゃない。
同じだけの想いを返せないとわかっていたから、少しだけ、ほんの少し、気づかれないように距離をつくったんだ。
できるだけ期待させないように。告白、されないように。
俺は、とても性格が悪い。
告白されたくないけれど、離れてほしくもない。
そんなワガママなことを考えていた。
沙月は大事な幼なじみだから。
好きじゃないのに、親しい友人としてそばにいてほしいと、彼女にとってとても酷なことを願った。
そう、それはまるで今のゆりりんと同じように。
立場が逆なだけ。
「…………」
昨日ゆりりんと話をした。とても酷なことを言われた。
俺にとってはとてつもなくしんどいことだ。