いつだってそこには君がいた。



その日の放課後、高橋くんと沙月ちゃんと共に結城くんの住むマンションに向かった。
と言っても、ふたりは同じマンションに住んでいるから、帰り道なのだけど。



「私ひとりで行ってくるね」


「ああ、あいつのこと、よろしく頼むな」


「うん、お願いね、優梨ちゃん」



結城くんが住む階までエレベーターで行くとふたりに見送られて降りた。


ひとりになり、身を引き締めるようにかばんの持ち手を強く握りなおす。
玄関の前まで歩くとインターホンを押した。


すこし待つと奥から誰かがやってくる足音がして、鍵が開けられる音もした。



「はーい、誰……」



そこで言葉が途切れた。開けられた扉、出て来た人物と目があって、身体に緊張が走る。


数秒間の沈黙。なにから話せばいいのかわからず立ち尽くしていると、結城くんが助け舟を出すように「なにしに来たの?」と優しい声のトーンで話し出してくれた。



「話したく、って」

「俺と?」

「うん……」



ふっと息を吐くように結城くんが笑った。



「彼女になってくれる気になった?」

「え……っ」

「ははは、嘘だよ。立ち話もなんだし、中に入る?」

「う、うん……」



扉を開けたまま中に通されて、小さく「お邪魔します」と言って足を踏み入れた。


さっきは意地悪な発言だったけど、私には「嘘」というワードが嘘のように感じた。
自意識過剰かもしれない。だけど、いつも他人を思いやる結城くんの心にできるだけ寄り添って考えたい。


結城くんの部屋に通された。
白黒で統一された家具はとても彼らしい。


結城くんが勉強机のところにある回る椅子に腰掛けて、私は丸いテーブルの前にちょこんと遠慮がちに座った。


いつもかっこよくセットされてある結城くんの髪が無造作で、いつもはコンタクトなのか、今日は黒縁のメガネをかけている。