いつだってそこには君がいた。



胸が押しつぶされるように痛む。
いつも格好良くって意地悪だったりするけれど空気を読むのが上手で優しくて、頼りになる彼。


いつも平然としていた姿の裏で、ずっと苦しんでいたんだ……。



「優梨ちゃんが誰を好きか知ってる。付き合ってあげてとか、好きになってあげてとは言わない。でも、もし、良かったら」


「うん……」


「ちゃんと振ってあげてほしい。きっとそれだけで空斗は救われるから」



涙ながらに好きな人のことを願える彼女を心から尊敬する。
自分の恋が実らないことを知ったとき、悲しみに打ちひしがれている最中で、もし私が彼女の立場にいたら、好きな人の笑顔を想うことができるだろうか?


心が綺麗な沙月ちゃん。
自分だって辛いはずなのに、好きな人のことをとことん考え抜いて、大事にしている。


伝わってくる。


だから私は「わかった」と深く頷いた。



「ありがとう、優梨ちゃん」



震える沙月ちゃんの肩に手を置いて、そのまま抱きしめた。


恋は自分の思い通りにはならない。想い続ければ必ず実るわけじゃない。


だって人と人の心の問題だから。


自分の感情や心を自由自在にコントロールすることも難しいのに、ましてや他人の感情や心を操れるわけじゃない。


十人十色、それぞれの恋心がある。
攻略法なんてない。
大好きだからって、同じように自分にも同じ感情が向かってくるわけじゃない。


苦しい。泣きたくなるぐらい切なくなる。
恋は楽しいだけじゃない。


だけど一度恋に落ちてしまったら、恋に落ちる前には、戻れない。


自分の意思で好きな感情をなくすことなんてできないのだから。



***