一年前の私は知らなかった。ずっとひとりだったから。


人と人が関われば必ずなにかしら衝突する。それぞれに抱く大切な想いが違うから。


あの人が好き、でも、あの人はあの人が好き。


なにも思い通りにはならない。
他人の感情は、自分の思い通りにはならないのだから。


次の日のことだ。その日は朝から特になにも異常はなく、明らかに昨日よりはいつも通りの日常を過ごしていた。


朝はいつも通り四人で登校したし、学校について教室に行くと雪菜ちゃんたちと色々お話しして、授業が終われば黒板を綺麗にした。


田中くんとはぎこちなくも、挨拶を交わすことが出来た。若干気まずくはあるが、昨晩寝る前に想像していたものよりは幾分かマシであった。



「また明日」

「うん、またね」



そして放課後になる。雪菜ちゃんたちに別れの挨拶をして、結城くんとふたり教室を出た。


下駄箱あたりまで行って私たちのことを待ってくれていた高橋くんと沙月ちゃんと顔を合わせた時、自分が家に帰った後読もうと思っていた本を教室に忘れて来てしまったことに気づく。


かばんの中身を何気なく見て顔面が固まる。引き出しの中に入れていて、かばんの中に詰めるのを忘れていたらしい。



「みんなごめん、忘れ物したから先に帰ってて」



待っていてもらうのも忍びなくて、顔の前で手を合わせるとみんなの反応を見る前に教室に走った。


急げばみんなに間に合うかもしれないし。