私は狼狽えながらも軽く頷いた。
「大丈夫、だよ」
「そっか、良かった!じゃあ今日放課後迎えに行くな」
「うん……!」
ふたりきりということだよね、これは、間違いなく。
高橋くんはなんとも思っていないのだということは伝わってくる。今だって能天気にニコニコしながらラーメンのチャーシューを頬張ているし……。
私はとてつもなく緊張している。
ふたりきりだなんて、久しぶりだからだ。
幾度となく偶然にはふたりきりになったことはある。だが、意図してふたりきりで待ち合わせるなど、それこそ第二ボタン以来だ。
ドキドキしないわけが、ない。
テスト勉強をするはずなのに、なんだこの高揚感。至福すぎる。
今日は悪いことだけじゃないみたいだ。
緩む頬を制御するのに苦労する。気を抜くと、いつでもだらしなくニヤニヤしてしまいそう。
午後の授業も頑張れる。
***
本を読むペースが落ちた気がする。中学三年生になってこちらに引っ越して来たけれど、それまでは一日中時間があれば文庫本の世界に入り浸って友だちのいない現実の侘しさを誤魔化していた。
頭の中で本の世界が上映される感覚がなんとも言えず大好きだったのだけれど、中学三年生の一年間は受験勉強もあったし、なにより初めての友だちができて本の世界よりも自分自身の世界を充実させるのが心から楽しかった。
そして高校生になって学級委員になってからというもの、日々の仕事や課題に友だちとの談笑で本を読む時間を見つけられない。
眠る前にページをめくるのだけど、睡魔に勝てずにいつの間にか朝になっていたりする。



