いつだってそこには君がいた。



血の気が引いていく。頭を抱えてうな垂れる。


結城くんと私が付き合っているって噂になっているの?


もしかして、沙月ちゃんもこの噂のことを知っていたりするのかな?


もしも耳にしたなら、どんな気持ちにさせてしまった?


私がもし、高橋くんが沙月ちゃんと付き合っている噂が流れたら……きっとモヤモヤしてしまう。


そんなことないってわかっているけれど、噂になるぐらい近い距離にいることに嫉妬してしまうかもしれない。周りが勘違いするほどふたりの仲良しさを思い知ると、心にビビビと刺激が走る。


だけど噂のこと知ってる?って、直接彼女に聞く技量は私にはない。


どうしたらいいのだろう……。



「はぁ……」



女子三人がいなくなったことを確認してから私も個室から出た。ため息を吐くと手を流しで洗って廊下を歩く。


昼休みで賑わう校舎内に、沈んだ自分が浮いたように感じる。


床の板の線をあみだくじみたいだななんて、無意味なことを考えた。



「日高」



その時だった。私を呼ぶ声に振り向くと、そこにいたのは、


「高橋くん」


……彼だった。


目を見張って、歩み寄ってくる高橋くんの存在を目に焼き付けるように熱く見る。


会えた。会いたいと思っていた彼に。なんという奇遇。



「どうしたの?」



高橋くんの教室は反対側だ。こちら側にいったいなんの用があるのだろうか。そういった意味を込めながら首をかしげて高橋くんを見る。



「……会いにきた」


「えっ?」


「日高、元気してっかなぁと思ってさ」



襟足を不器用に触りながら、高橋くんがそう言った。私は一瞬間をあけて「ぷっ」と笑う。