「願いごとなんにするー?」
「そういうのって言っちゃったら叶わないんだよー?」
「そーなの?」
高橋くんと沙月ちゃんの会話を聞いてそうなのかと顎に手を当てた。
誰かに願いごと教えちゃいけないんだ。
「ゆりりん寒くない?」
「え、うん、大丈夫だよ」
「カイロならたくさん持ってるよ、俺」
「ははは、結城くんはカイロ屋さんだね」
顔では笑って見せたものの、以前にも学校でカイロをもらったことを思い出して、心の中がモヤっとした。
沙月ちゃんの前で優しくされるのは、あまりよろしくない。
友だちである彼女を傷つけたくない。
結城くんが私を好きだとか、そんな自意識過剰なことを考えているのではなく、沙月ちゃんを不安にさせたくないという一心。
「順番来たよ」
私が言うと、みんなが横一列に並んでお賽銭箱に小銭を投げ入れた。
二礼二拍手一礼。
瞼を閉じたまま、お願いごとを心の中で唱えた。
《大切な人たちと一緒に受験合格して、今年一年みんなと笑ってすごせますように》
言い終わると閉じていた目を開けた。
みんな同じぐらいでお願いごとをし終えたようで、後ろの人たちがつっかえているので横にはけた。
「おみくじ引こう」
「いいね、引こう引こう」
結城くんの提案に頷いて、すこし離れたところにあるおみくじコーナーに向かった。
巫女さんにお代を預け、おみくじを引いた。
みんなが引き終わるのを待って、一斉に閉じられていた封を開けて結果を見る。
……小吉だ。
「どうだった?」
「小吉だったよ」
沙月ちゃんが自分のおみくじを見せながら聞いて来たので、私は答える。
「私は末吉だった。優梨ちゃんの小吉とどっちの方がいいのかな?」