いつだってそこには君がいた。




天然なのかわざとなのかはわからなかった。
でもその間の抜けた結城くんの一言に沙月ちゃんの険しかった顔が綻ぶ。


好きな人に心配されるのは嬉しいことだよね。


嫌な瞬間があっても、好きな人はそれを帳消しにしちゃう言動を故意なくやってのけてしまう。


だから恋する私たちは、苦しくても辛くても、好きなのをやめられなくなる。
好きが加速して、止まらなくなる。


"好き"が重なって、大きくなるんだ。



「寒いなぁ、ほんと」


三人が住むというマンションまで歩いた。
やはり私の家からさほど遠くない場所に位置していた。


十階建てだというこのマンション。
落ち着いたブラウンの外装は住宅街にマッチしていた。


結城くんがエントランスの入り口で鍵をまわし、扉が私たちを迎え入れる。



「私の家が四階で、空斗の家が六階で、愛希は七階に住んでるんだよ」


「そうなんだ」



エレベーターに乗り込む前に沙月ちゃんが教えてくれた。
声が反響して、耳に届く。



「ゆりりんは一軒家?」

「うん、そうだよ」


結城くんの問いに頷いた。


「すごいね」

「そんなことないよ。お父さんの会社って転勤多いから、いつも会社が準備してくれてる社宅に住んでるんだ」



沙月ちゃんが「大変だね」と言ったので深く首を上下させた。

本当に、心から大変だった。


引っ越しの支度は毎度すごく面倒で、引っ越した後の荷解きも億劫。


新しいものを買うときもかさばらないようにと極力買わないようにしていた。