いつだってそこには君がいた。



「辛くなってトイレに逃げて来たし、空斗、絶対変に思ったよね」


「大丈夫だよ。結城くん鈍感だと思うから」



いや、たぶん鋭い方なのだろうけど、沙月ちゃんの気持ちに気づいているか気づいていないかと言ったら、後者だと思う。


だから、大丈夫。無責任だけど根拠はない。
それでも弱っている沙月ちゃんには必要な言葉だと思ったの。


私には語彙力もコミュ力もない。沙月ちゃんのことは大好きなのだけど、元気づけられるだけの力量がないのだ。


デタラメなこと言って申し訳ないけど、これが私の精一杯。



「ありがとう、優梨ちゃん」

「ううん。結城くんに昇降口で待っててもらってるから行こう」

「うん」


落ち着いた沙月ちゃんとふたりでトイレを後にした。


閑散とした空気感に包まれた廊下を行く。三年生のクラスあたりにもう生徒がいないせいだろう。


受験生だし、勉強したくて塾へ行ったり家に帰ったり、図書館へ行ったりする人でまちまち。羽目を外す目的でたまには遊ぼうと話していたクラスメイトもいたっけ。


窓の外にはすかすかになった木々たちが寂しそうにそびえ立ち、落ち葉が土に還って、冬の儚げな雰囲気を演出している。


廊下にいるだけでこんなにも寒いのだから、外はきっともっと寒い。


高橋くんは大丈夫なのだろうか。



「お、やっと来た」



昇降口の柱に寄りかかる結城くんに「ごめんね」と謝ってから上履きからローファーに履き替える。


沙月ちゃんは結城くんになにも言わずに私の横に立った。



「沙月大丈夫か」



先に声をかけたのは結城くんだった。


「え?」

「腹でも痛いの?」

「ち、違うし……!」



的外れな問いに沙月ちゃんがすかさず突っ込みを入れる。