いつだってそこには君がいた。



急いで身支度を済ませると沙月ちゃんのもとへ向かった。
私を見て沙月ちゃんが「はりきりすぎ」とからかって来たけど、そういうことじゃない。


私は高橋くんのことか心配なのだ。



「やっぱ行くの?」



かったるそうに顔を歪ませてかばんを肩にかける結城くんが歩み寄ってくる。



「そんなに嫌なら別に空斗は来なくていいよ」


「……いや、女子ふたりに押しかけられてアイツ可哀想だから行ってやるよ」



結城くん、そんな言い方したら沙月ちゃんが怒っちゃ……。



「なにそれ!?逆にハーレムなんだから喜んでほしいけどね!?」



ほ、ほら、怒っちゃったよ……!?



「可愛かったら喜ぶだろうけど」


「はあ?可愛いじゃん」


「ゆりりんはね?」


「……いっぺん天国に召されてこい」


「へいへい」



ふたりの痴話喧嘩にあたふたしていると沙月ちゃんが「トイレ!」と足早に行ってしまった。


沙月ちゃんは結城くんのことが好きだ。


さっきの会話、いつものように冗談のかけ合いなのはわかる。だけど好きな人に言われて気持ちのいいものではないのは、好きな人がいるから理解できる。


好き人からは、常に可愛いと思われていたいものだ。


沙月ちゃんの気持ちを知らない結城くんに非はない。いやあるかもしれないけど、幼なじみで、それが当たり前の風潮になっているふたりの関係だから、彼が故意に傷つけようと言っているのではないことは承知している。


きっと沙月ちゃんも。