階段に座り話す環境が整うと、
「受験、いつ終わったの……?」
「AO入試だったから試験って試験はとくになかった」
 四月のオープンキャンパスで予備面接という対話式の面接を受けエントリーシートに志望理由や自己アピールを記入。
 夏休み中のオープンキャンパスで願書提出。その際には三〇〇〇文字程度の志願理由書を一緒に提出したという。
 そのあと九月にもう一度面接があり、十月始めに合格通知が届いたらしい。
「学力試験は……?」
「通常、AO入試であってもセンター試験を受ける必要があるらしいけど、俺の場合は指定校推薦枠の基準をクリアしているから成績面を問題視されることはなかった」
 なるほど……。
 それにしても、面接が四月から始まっていたとは驚きだ。
 まったく気づかなかった自分に呆れもするし、「一過程だから」と涼しい顔ですべてをこなしたツカサもツカサというか……。
 しかも、インターハイ前で大変な時期にオープンキャンパスへ行き、願書を提出していたなんて……。
 ツカサの心臓はどれほど丈夫にできているのだろう……。
「ほかに訊きたいことは?」
 ほか……? あっ――。
「明日、なんの競技に出るの?」
「それも知りたかったこと?」
「……今日優太先輩と話していて、知らないことにびっくりしたの。どうして知らないのかな、ってものすごくびっくりした」
 苦笑を返すと、ツカサは「なるほど」と言った表情をしていた。でも、
「ふたつあるうちのひとつは教えられる。けど、もうひとつは教えられない」
「……どうして?」
「うちの組しか知らないことだから」