更衣室を出たところで赤組の衣装製作班の先輩たちに取り囲まれ、
「姫、髪の毛ポニーテールにしよう!」
「えっ? ツインテールも捨てがたくない?」
「でも、長ランで凛々しさ演出するならポニーテールだよ」
 意見はふたつに分かれ、多数決でポニーテールに決まった。

 校舎を出るまでは、チアガールの衣装よりも長ランのほうが肌の露出が少ないことにほっとしていた。けれども、外に出ると赤い衣装の中に黒がいるというだけで変に目立っていることに気づく。
 風間先輩の言葉は正しかったのだ。応援団に女子がいるというだけで、人目を引いてしまうらしい。
 いつかのスチル写真撮りのときのように背を丸めていると、パシッ――桃華さんに背を叩かれ「姿勢を正しなさい」と叱られた。
 涙目になっている私を美乃里さんと香月さんはクスクスと笑う。そして、
「せっかく格好いい長ラン姿なんだから凛々しくね!」
 美乃里さんの一言に、深呼吸をして姿勢を正す。
 美乃里さんと桃華さんがチアリーダーの衣装を着ているのに対し、モニュメント製作班だった香月さんは男子と同じ法被を体操着の上から羽織っている。
 そんな格好を見れば、沸々と無意味な感情が沸き起こる。
 やっぱり、モニュメント製作班でみんなと一緒にパレードで歩くだけのほうが良かったんじゃないかな……。
 そんなことをぐるぐると考えているうちに組別観覧席へ着いてしまった。