「ふ~ん……司に何か言われたってところかな?」
「っ……」
「翠葉ちゃんは隠し事ができないね」
 秋斗さんはまるで気にするふうではなくクスクスと笑う。
「司に、俺とはふたりきりにならないように言われた、かな?」
 何も言えないでいると、
「それを翠葉ちゃんが申し訳なく思うことはないよ。事実、俺が司でも同じように釘を刺していたかもしれないし。でも、そっか……じゃ、どうしようかな」
「何が、ですか……?」
「今週、雅が一時帰国するんだ。時間が合えば翠葉ちゃんと会いたいって言ってたんだけど」
 雅さんっ!?
「会いたいですっ」
「それ、俺が送迎するつもりだったんだよね。唯も蒼樹も仕事入ってて動けるのが俺だけだったから」
 送迎……つまり車にふたりきり――それは完全にアウトだ。
「あの、場所を教えていただけたらひとりで行きます」
「そう? 場所はプレジデントホテル」
 プレジデントホテル……。どうしてウィステリアホテルじゃないの~……。
 プレジデントホテルとは、ウィステリアホテルと並ぶ高級ホテルだ。もちろん、ウィステリアホテルと同様、高校生の自分がひとりで行くには敷居が高すぎる場所。
 よりによってなぜ――。