ただ手にキスをされているだけなのに、身体中が沸騰しそうなほど熱くなるのはどうしてだろう。
「しかも、海の中で横抱きにされたって?」
 ツカサの鋭い視線に見据えられ、
「で、でもっ、水着っていっても肌の露出はしてないよっ!?」
「……は?」
「だって、タンキニの上にラッシュガードって長袖のパーカを着て首元までファスナー閉めていたし、足はトレンカはいてたしっ――」
 必死に補足説明をすると、
「それ、水着って言うの?」
 真顔で尋ねられた。
 唯兄にも同じようなことを言われたけれど――。
「その格好じゃなかったら海水浴なんて行かなかったもの……」
 ツカサの胸元に視線を落とす。と、ぎゅ、と抱きすくめられた。
 ツカサは暑いと言うかもしれない。でも、エアコンが利き始めた部屋ではツカサの体温が気持ちよく感じる。
 よりツカサの体温を感じたくて背中に腕を回す。と、カタン――と電気ケトルが沸騰したことを知らせた。
 ツカサの腕がほんの少し緩められたけれど、解放されたわけではなく、
「ツカサ、お茶だけ淹れよう?」
「……お茶、淹れたら?」
「……くっついてたい」
 言ってツカサの胸に額を預けると、背中に回されていた腕がはずされた。
 リビングへ戻ってから、私たちにしては珍しく、ずっとくっついて過ごした。それが夏休み最後の思い出――。