「……本当に?」
「……翠は自分にできる範囲で俺を選んだって見せてくれただろ。だから――」
 それはストラップのことだろうか……。
「翠は何を案じてる?」
「……私はツカサが好きだよ。秋斗さんのことは大切な人ではあるけれど、恋愛感情は持ってない。ストラップとかそういうのは、何を考えることなくツカサからいただいたものを選べる。でもね、秋斗さんの気持ちすべてを拒絶することはできないの。もし、自分がツカサに拒絶されたら、って考えると怖くて――とてもじゃないけど、自分がそれを人にすることはできないの。でも、それでツカサが不安に思っているのだとしたら、私はどうしたらいいのかな……」
 エレベーターはすでに十階に着いている。ドアが開いて閉まって、そのまま十階に留まり続けていた。
「翠はそんなことまで気にしなくていい。たぶん、不安になるのは俺個人の問題だから」
 そんなふうに言われるとは思っていなくて、まじまじとツカサを見ていると、ものすごく嫌そうな顔をして、
「もし、翠が同じようなことで不安に思っていたとしても、俺だって翠と同じことしかできない。もっとも、俺の場合はどんな人間に言い寄られても冷たくあしらうことしかしないだろうから、そのうえで翠が不安になったとしても、それ以上にできることなんてないわけだけど」
 私ができない部分にグサリと釘を刺すあたりが実にツカサらしい。
「いい加減、エレベーターから出たいんだけど」
 言われて、私は慌てて「開」ボタンを押した。