『沈黙は肯定だから。……でも、この話は帰ってからにしよう。電話じゃなくて、会って話したい』
「……わかった。あと九日間がんばってね」
『あぁ。じゃ、おやすみ』
「おやすみなさい」
 携帯をサイドテーブルに置いて、ベッドに転がる。
「秋斗さんもツカサも、どうしてこんなに勘がいいのかな」
 まるで隠し事ができる気がしない。でも、ツカサの「不安」に対して話す機会が得られたのは良かったのかも……。
 プライドの高いツカサのことだから、すべてを話してくれることはないだろう。それでも、今の電話でツカサの中へ一歩踏み込むことを許された気がする。
「あと九日間……長いな」
 でも、月末には会えると思うと、少しだけ元気が湧いてきた。
 明日はソルフェージュとピアノのレッスンの日。帰宅したら学校の宿題を仕上げよう。
 夏休み中のノルマを終えれば最終日にはツカサに会える。ご褒美があると思えばすべてがんばれる気がした。