どうしよう……。このまま行くと、「携帯電話は通信機器だから」と言われてしまう。
 次の話題を探していると、
『今日、海水浴行ったの?』
「行ったっ」
 慌てて答えたら声が大きくなってしまった。
 手に汗を握る状態で、ツカサの次の言葉を待ち受けていると、
『そういえば、翠って泳げるの?』
 投げかけられた問いに撃沈する。でも、話題がまったくないよりはいいのかもしれない。
「……ツカサには知られたくなかったのに」
『あぁ、泳げないんだ?』
「でもっ、今日、浮けるようになったし、息継ぎはできないけど泳げたものっ」
『息継ぎができないって、それ泳げたうちに入るの?』
「意地悪……」
 すると、携帯の向こうからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「……笑った」
『あ、悪い。翠が拗ねてるのが目に浮かんだ』
「違う。どうしてっ? どうして自然に笑っているときはいつも電話で、ツカサが目の前にいないのっ? ずるいっ」
『ずるいって言われても……』
「……会いたいな」
『合宿始まってまだ五日なんだけど』
「わかっているもの。あと九日は会えないのでしょう?」
『……三十日、藤倉に帰ったらマンションに顔出す』
「うん……」