夏休み中は、マンションにいたり幸倉へ帰ってきたり、とちょっと落ち着かない過ごし方をしていた。
 本来なら、幸倉で過ごすのが自然なのだろう。けれども、フロアハープをマンションへ運び込んでしまっている都合上、ハープの練習やレッスンにはマンションを使う必要があった。
 そして、レッスンや病院へ通うにも、高崎さんのお仕事をお手伝いするにも、ウィステリアホテルへ行くにも、アクセスのしやすさはマンションのほうが上だったのだ。
 だから、学校へ通っているときとは逆で、夕方になると唯兄と私が幸倉へ帰り、家族五人揃ってご飯を食べる。そして、翌日の予定に合わせて私は幸倉に泊まったり、マンションへ戻ったり――そんな日々を送っていた。
 お母さんも夏休み中は幸倉に滞在。また二学期が始まるころにマンションへ戻ってくる予定。
 自宅が二箇所あるのは変な感じがするけれど、拠点となる場所が二箇所あることで、私は難なく生活することができるのだ。
 静さんやお母さん、お父さんに心からの感謝を――。