「…………」
「蒼兄……?」
「……えぇと、翠葉ちゃん。記念すべく二月二日、お兄さんは帰りが遅かったあの日にそういう進展があったものと思っていたんだけど……。もしかして、違ったのかな?」
 不自然な笑みを貼り付け、思い切り棒読みで尋ねられた。
「好きとは伝えた……。でも、ツカサから何か言葉を返されたわけじゃないの。好きって伝えて、ありがとうって言われたら付き合っていることになるのでしょう?」
「いや、それは多分に語弊がある気がするけど……。あの日は翠葉が気持ちを伝えただけだったの?」
「うん」
 蒼兄は頭を抱えてしまい、次に顔を上げたときにはその日のことを訊かれた。どんなやり取りをしたのか、と。
「好きって言ったらぎゅって抱きしめてくれたの……。キス、してくれた」
「……はい、翠葉ちゃんストップ」
 直後、両頬をつままれた。
「司はさ、好きでもない子を抱きしめたりしないしキスもしないよ。だから翠葉はもう少し自信持っていいんじゃないかな?」