「……ま、いいわ。問題が解決したならあの男の機嫌も戻っているんでしょうし」
「ごめんね、迷惑かけて」
「翠葉が謝ることじゃないわ」
 かといって、あの男から謝罪の言葉が聞けるとも思わない。
 別に謝罪してほしいわけじゃない。でも、少しくらい事情がわからないものか、と考える。なら、少し方向転換を試みようか……。
 あの男側の問題ではなく、翠葉側のことならば答えてもらえるだろう。
「翠葉は大丈夫なの?」
「え、何が?」
「……秋斗先生とのときは色んなことが怖いって言っていたじゃない?」
「あ……うん。それがね、不思議なの……。秋斗さんとのときには怖いと思ったことが、ツカサだと怖くはないの」
 言ってすぐ、翠葉は首を傾げた。まるで、自分の言葉に思い悩むように。
「全部が怖くないわけじゃないんだけど……」
 翠葉の次なる言葉を待っていると、
「キスも抱きしめてくれるのも、嬉しいの。その先を求められるとまだ困ってしまうのだけど……。でも、それでツカサを怖いと思うことはないの。不思議だよね。秋斗さんとツカサ、何が違うのかな」
 さらっと話してくれたけど、結構大胆極まりない内容だったと思う。訊いた私が赤面する程度には。