でも、阿部くん。

あんまり恋とかする気ないのかなぁ。


少しずつでいいから、わたしたちの心がもっと近づいていったら嬉しいと思っていたのに……。


わたしは阿部くんの腕をひっぱりながら、少しずつ色を濃くしていく夕焼け空を眺めていた。


演奏の音や歓声が空中を漂っている。


そんな中、阿部くんの方から、ありがとう、とかすかに聞こえたような気がした。



それから、一番小さいステージだけどトリに抜擢された、その若手のインディーズバンドを阿部くんと一緒に見た。

最後にアンコールでやってくれたラブソングにわたしは涙が出そうになっていた。


届かなくても追いかけることで、それが自分の生きる力になる。

そんな恋もあるのだろうか。


まさに、それは夜空を泳ぐ星のよう。