まあ、とりあえずバスの時間もあるし、さっさど帰ろうか。

そう思った時。


――あれ? 阿部くん!?


観光客とともに、展示コーナーから出てきたのは、あるクラスメイトの姿だった。


「あ……!」


ふんわりとした髪の毛に、白シャツにカーディガン、足首が捲くられたズボンにバンズのスリッポン。

シンプルな格好だけど、とてもよく似合っていてお洒落に見える。



阿部……名前は、せーいちくん。



声をかけようとしたが、そのクラスメイトはパンフレットを片手に再び展示コーナーへ戻って行ってしまった。


わたしもこっそりと展示コーナー入口から、中をのぞきこんだ。


おじさんおばさんや、家族連れが二重に列を作り、展示されているパネルをまじまじと見つめている。


その奥に、彼の姿があった。


声をかけようと思ったけど、これ以上中に入ったら入館料を払わなければいけないし、

真剣な横顔でその展示を眺める彼の姿を見ると、今は話しかけてはいけないような雰囲気を感じた。