言葉にすると、瞳の奥が熱くなった。
本当はもっとしっかりした言葉で言わなきゃいけないんだろうけど、今の僕には無理だった。
思いが全身からあふれ出してしまいそうで、僕は顔を見られないように、腕の力を強め、彼女のマフラーに顔をうずめた。
「……せーちゃん?」
僕の腕の中で、彼女は小さく声をあげた。
「だから、もう勝手にいなくならないで」
そう訴える僕の声も、弱々しいものだった。
だけど、やっと伝えることができた。
どれくらいそうしていただろう。
街灯の明かりが次々と消えていく。
少しずつ顔を出そうとする朝の光が、僕たちの姿を露わにしていく。
人通りも増えてくるし、そろそろ腕を離した方がいいかなと思いつつも、体は動かなかった。
「ごめんね」
思わず、この言葉が口から出てしまう。
「何で謝るの……?」
「分かってよ」
「分かんない」
「分かるでしょ」
僕は腕を緩め、俯いたままのトシミちゃんの顔を見つめた。
「だって……そんなわけない……」
彼女は悩ましそうな声をあげながら、左右に瞳を揺らした。
視線を動かすたびに、そこから透明な涙をあふれ出させていく。
僕は腕をほどき、涙が流れている彼女のほっぺたを両手ではさみこんだ。
この町ももう朝夜は気温が低く、僕の手も彼女の頬も冷たい。
だけど、その涙の跡は温かく、そこからじわじわと熱が通っていくのを感じた。
そのまま、こつっと額同士をくっつけた。
「トシミ、好きだよ」
目の前の彼女に向かって、そうつぶやいた。
「え……?」
彼女は僕の腕をぎゅっと掴み、目を大きく開けた。
澄んだ冷たい空気の中、訪れたほんの少しの沈黙。
触れ合っている部分から伝わる熱が、心地よくて、まるで時間が止まったかのよう。
そう思っていると、目の前の彼女は、
「あの時ひどいこといっぱい言ってごめんね」
とかすれた声で言った後、こう口を動かした。
「せーちゃん……好き」
その瞬間、胸がいっぱいになり、たまらなくなり、
僕は彼女の唇に自分のを思いっきり重ねていた。

