ようやくたどり着いた僕は、両手を膝に当て、ふーふーと呼吸を落ち着かせる。
「ごめん、静かに出てきたつもりだったんだけど、起こしちゃった?」
そんな僕に、トシミちゃんは何も変わらない様子でそう言った。
踏切内では、振動とともに同じ形をした車両が次々と流れていく。
がたがたん、がたんがたん、と大きな音が暗い朝の町に響いた。
「待って」
まだ顔を上げることができない僕は、
その音に消え入りそうな声しか出せなかった。
「や、阿部くんの言うとおり、今日こそ午後から仕事戻ろうと思って」
「ごめんね」
「え?」
「行かないで」
「…………」
やばい泣きそうだ。
まだ息切れもおさまってないし、自分、何て格好悪いんだろう。
でも、この機会を逃すわけにはいかない。
「もう、縦読みとか、本当にいいから」
僕はさっき机に置いてあったメモを広げ、彼女に見せた。
『阿部くん 冷凍庫のアイス食
べていいからね 食後に軽
く食べようと思ってた
んだけど忘れてた・・・
飲み過ぎには注意しなね
バイバイ 2日間ありがとう
帰ったらちゃんと仕事行きます
トシミ』

