布団の温もりから察するに、たぶん出て行ったばかりのはず。
急いで、スウェットから簡単な外着に着替える。
「ん?」
上着を羽織りながら玄関に向かう途中。
テーブルの上に1枚のメモがあることに気がついた。
そこにはトシミちゃんが書いたらしい文字が並べられていた。
僕はそれを手に取った。
えーと、冷凍庫にアイスがあるから食べてね……、っと。
――いや、違う。
「……ばか」
あることに気がついた僕は、
思わず、口からその言葉を発していた。
もう……無理して器用ぶったことしちゃって。
僕はそのメモをくしゃっと握りつぶしながら、部屋を飛び出した。
朝日は顔を出しておらず、あたりは真っ暗だった。
「はぁ、はぁ」
まだ空には星が瞬いている。
その光と街灯の明かりを頼りに僕は足を進めた。
――カン、カン、カン。
家やマンションの奥、最寄りの駅近くにある踏切の音が聞こえた。
やばい、あの電車に乗られたら追いつけない。
運動不足の体を必死に動かし、僕は駅に向かって走った。
――いた!
幸いなことに彼女は下がり始めた遮断かんの手前にいた。
重そうなスーツケースを引いているためか、急いでそれを渡ることは無さそうだ。
「トシミ!」
速くなる息と息との間、
僕は近づいてくる電車の音に負けないよう、声を振り絞った。
「阿部くん?」
僕の声に気がついたトシミちゃんは、振り返って大きく目を見開いた。

