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夢なのか、昔のことを思い出しただけなのか、分からなかった。
『ずうっと一緒にいようねえ』
ごうごうと窓の外の景色が流れる中、隣に座っている彼女がそう言った。
『もちろんだよ』
と僕は答えた。
あの時は、本気でそう思っていたから。
彼女はジョバンニで、僕がカムパネルラ。
中学時代のある出来事が原因で、時々悲しい顔を見せる彼女を
僕はほっとけなかった。
一緒に日々を過ごしていくうちに、
幸せそうな顔で笑ってくれる瞬間が増えて、嬉しかった。
彼女が本当の幸せを見つけられるよう、僕はどこまでも一緒に行きたいと思っていた。
だけど実際は逆だった。
彼女からたくさんの幸せを与えてもらったのは僕。
彼女と一緒にいることで、普通に楽しいとか、嬉しいとか、悲しいとか、好きとか、
自分の思いに素直に従っていいんだ、と思うことができた。
彼女もまた、大好きだった陸上に復帰できて、クラスメイトにも言いたいことをちゃんと言えるようになって。
初めて会ったときよりも、彼女は、本当の自分自身を取り戻せたのだと思う。
僕なんかが彼女のそばにいなくても、彼女は1人で幸せに生きていけると心のどこかで思ってしまうほどに。
そして、彼女は僕のそばからいなくなってしまった。
僕と先生の幸せを願って。

