落ち着けー落ち着け―、と頭の中で必死に唱えていると、
「あのさ、こっち戻ってから、せーちゃんは幸せだった?」
と、僕の反対側を向いたらしい彼女の声が耳に入った。
そういえば、あの町を離れてから、僕はどうだったのだろう。
「……うーん。よく分かんないなー。トシミは?」
「あんまりかなぁ。色々上手くいかないね」
「でも、またトシミと会えたこと、おれは嬉しいよ」
僕がそう口にすると、彼女から軽く息を吐く音が聞こえてきた。
言ってはいけないことだったのだろうか。
「そっか。……それでいっか。ありがと」
それは、少しつんとした物言いだった。
彼女はあまり帰りたくないのかもしれない。
さっき僕を抱きしめてきたのは、この気持ちからだったのだろう。
本音では、もっとここにいてくれていいと思っている。
むしろ、いてほしい。
でも、彼女には彼女の生活があるし……。
「…………」
僕がどの言葉を発しようか迷っているうちに、会話は終わってしまった。
彼女はもう寝てしまったのだろう。
しばらく静まり返った空間に身を投げ出した後、
僕もうっすらと目を閉じて眠りにつこうとした。

