「そういえば、何であの手紙トシミが持ってたの?」
小声でつぶやいたつもりだったけど、
壁や天井に音がぶつかって、
その響きは暗い空間をさまよっているかのようだった。
彼女の方から布団がこすれる音が聞こえる。
「えーと、その、阿部くんの引越し準備手伝った時に、偶然見つけちゃって。
……勝手に見て、勝手に持ち出してごめん!」
「ううん。てか、それ間違って捨てちゃったと思ってたんだよね。どこにあったの?」
「……どっかの引き出しの中」
「どこどこ?」
「あの部屋のどっか。詳しくは忘れちゃった」
「え、気になるんだけどー」
問い詰めても、彼女はごまかすだけで、それ以上は答えてくれなかった。
何か悔しくて、その頬をつねったり、軽く頭をぶつけたりしていじめたくなったけど、
そうすれば絶対に気持ちが抑えられなくなると思い、止めておいた。
変に鼓動が速くなり始めてしまう。
彼女に伸ばしかけた手を戻し、天井を向いたけど、
同じ布団に入っているためか、その温もりを近くに感じた。
「わたし、ずっと考えてて」
細い声とともに、布団を被りなおす音が聞こえた。
「本当の幸せって何だろう」
「え……?」
「みんなが幸せになればいいなぁ、って思ってたけど。何かそれがよく分かんなくなっちゃって」
「おれ、上手く言えないけど、トシミちゃんはもっと自分の幸せに貪欲になっていいと思うよ」
「…………」
「みんなのことばっかりじゃなくて。トシミちゃんもちゃんと幸せにならなきゃ」
……って、僕なんかが言うことじゃないよな。

