1時間に1本あるかの釜石線では、もう間に合わない。
駅前に止まっていたタクシーに乗り、新幹線の駅へ。
もうホームにいるとのことだったので、ダッシュで入場券を買って、階段を駆け上がった。
部活で足腰を鍛えたためか、自分でも驚くほどのスピードを出していたと思う。
息切れもほぼ無し。
そういえば1年くらい前のわたしは、
宮沢賢治記念館行きの階段をひーひー言いながら登っていたっけ。
あの時も、階段の先には、阿部くんがいたんだ――。
登り終え、左右を見回すと、「こっちだぁ!」とユカチンの叫び声が聞こえた。
もともと帰省シーズン以外は閑散としているこの駅。
すでに新幹線は到着していて、ホーム上にはユカチンとクニオの姿しかなかった。
スニーカーで足元のコンクリートを蹴る。
「阿部く……せーちゃん!」
そう叫ぶと、既に新幹線に乗り込んだ阿部くんが、ドアから顔を出してわたしを見た。
トゥルルルルルルルル、と新幹線の発車ベルが鳴る。
1、2、3、4、1、2、3、4……。
がむしゃらに走っているため、ピッチは不安定だけど、
一歩、一歩ごと、頭の中では高速で数字が刻まれていく。
――間に合え!
って、間に合ったところでわたしは何がしたいんだ?

