日ごとに強くなる春の風に吹かれながら、自転車にまたがる。
「……もう」
ずっと振動が止まらないスマホをわたしはポケットから取り出した。
なぜ鳴っているかは分かるけど。
一応スマホを見てみる。
予想通り、ユカチンからのラインだった。
うさぎがめちゃくちゃに怒っている顔のスタンプが連続で送られてきていた。
そして、それを見た瞬間、ユカチンから電話がかかってきた。
「やっと既読ついた。あんた、何してたぁ!?」
「え……今、部活終わったとこ」
「あんたバカ!? 阿部くん行っちゃうべ? いーからさっさど来いって」
「たぶん間に合わないし」
「はんあぁ!? ちょ……「トシミ! おんめぇ何してるだぁ!?」
ユカチンの言葉をさえぎって、クニオの必死な声が聞こえてきた。
スマホを奪ったらしい。
「んだから……今、部活終わったとこ」
「バカ! さっさど来いって!」
「だから、いいよ。もう間に合わねーべ?」
会話が振り出しに戻る。
クニオの大声にスマホを耳から少し離した。
どおっと風が吹き、片手で押していた自転車が、ゆらゆらと左右に揺れた。
すると、再びユカチンの声に変わる。
「あんた……もう、何考えてるか分かんねーよっ、……ううっ」
「ユカチン?」
「来ないと絶交だから!」
ユカチンの悲痛な叫び声とともに、プツッ、と電話が切れた。
スマホの時計を見る。
もう間に合わないよ、こんな時間だもん。
でも――
ユカチンも、クニオも、本気でわたしたちのことを考えてくれているんだ。
そう思うと、嬉しくもあり、切なくもあった。
とりあえず、自転車を猛スピードで走らせ、駅へ向かった。
それにしても絶交って……小学生か!?

