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大きく深呼吸をして、その場で2、3回軽くジャンプする。
目的地は、踏切り板とその奥に広がる着地用の砂場。
行くぞ!
心と体と風のタイミングを合わせ、スタートを切った。
スピードを上げ、右足と左足で順番に地を蹴る。
正確なピッチを刻み、1、2、3、4と足裏で地面に数字を置いていく。
そして、
1、2、3、4、GO!
ちょうど17歩目。
最後の5は自分に暗示をかけるように、行け! と英語に変換する。
それと同時に、右足で思いっきり踏切り板を蹴った。
重力にならった空気を切り裂き、わたしは飛び立つ。
空中でもがき、少しでも高く、少しでも遠くに。
そして、砂の海へ――。
「トシミちゃーん! すんげぇ~!」
「まじか!? うちらの記録なんてまじオナラレベルじゃん!」
うーん、着地は微妙だったかな。
柔らかい砂の上に思いっきり尻から落ちた。
しかし手前の砂を傷つけないように、必死で体を横にねじって踏ん張った。
顔を上げると、幅跳びメンバーはもちろん、先輩や同じ学年の仲間たち、コーチもみんな笑顔と拍手を送ってくれていた。
「おおおお! トシミ復活だ~!」
「ほーら、うちが無理やりスカウトしてきて良かったべ?」
ジャージについた砂をぱんぱんとほろいながら立ち上がると、わたしを誘ってくれた先輩が抱きついてきた。
「ぐ、ぐるしいです」
「飛べなくなってから苦しかったべ? よーしよーし泣け!」
そのまわりを同じ学年のメンバーがわいわいと騒ぎながら囲む。
あれ?
何でこんなに感動的なシーンになっているんだ?

