車道が赤信号だったため、点滅している青信号を急いで渡った。
それから何も考えられなくなるほどに全力で走った。
「はぁ、はぁっ……」
後ろを振り返ると、歩道には自転車に乗った中学生しかいなかった。
一応、逆側の歩道にも目を移したが、車道を次々と走る車が邪魔だったこともあり、誰も目につかなかった。
阿部くんは追ってはきていない。
そうだよね。仕方ないよね。
「あはは、わたし、ばかだなぁ……」
今日はチャリがパンクしていたため、歩きでここまで来ていた。
よって、そのままとぼとぼと帰路につき、
家に入った瞬間、自分の部屋に駆け込んだ。
改めてさっきの会話がリピートされる。
それは耳鳴りとなってわたしを攻めた。
わたしと先生、どっちを助けるの? って――。
ああ、最低だ。
何てこと言っちゃったんだろう……。
止まらない涙をティッシュで拭い取り、わたしはこの前の手紙を手にした。
「――っ!」
びりびりにやぶきたい衝動にかられたが、もちろんできなかった。
先生は、そんなに強い人ではないらしい。
どんな思いで、先生は学校を去って、この手紙を阿部くんに書いたのだろう。
彼氏がいるって書いてあるけど、本当なの?
だって、あんなに必死になって阿部くんを追いかけて、ホーム上で叫んで。
きっと、
先生は自らを犠牲にしたんだ。
阿部くんの幸せを願って――。
わたしにはその手紙の中身、こうとしか読めなくなっていた。
『阿部くん だいすきだよ』って。
こんなわたしなんかじゃ、阿部くんを幸せにできるはずがない。

