広い駐車場のはじっこ。
歩道のすぐ奥では、びゅんびゅんと車やトラックが行き交っている。
「あんまり連絡返してくれないし、心配だったんだけど」
「ごめんね。雪少なくなったし、部活が本格的になってきて」
「そっか。ごめんね」
この国道4号線をずっと進めば関東にたどり着くことができる。
でも、阿部くんの住む町はこの国道とは直接つながっていないらしい。
「次行く高校ってどんなとこ?」
「んー、普通の私立。でも家から結構遠くて」
「やっぱり近くのとこには行きづらい?」
「別にいいんだけど、親が気遣ってくれたみたい。一応県内なんだけど、ほぼ群馬だよ~。電車とバスで通学すんの」
「そうなんだ」
おそらく同じ中学だった人がいない高校で、新しい生活を送ることになるのだろう。
編入する高校は群馬の近く、かぁ。
先生との距離、ぐっと近くなるんだ。
「あ、でも向こうでもバイトして、休みの日とかでこっち遊びに行くし。トシミもまたおいで」
「でもわたし、これから土日も練習とか大会とかで、忙しくなりそうで」
「そっか。……あのさ、もしかして、あんまり電話とかしない方がいい?」
「んー、どうだろう。家帰ったら結構ぐったりしちゃってるんだよね」
駐車場脇の自転車置き場から、中学生らしき女の子たちの楽しそうな声が聞こえる。
どうしよう。
わたし、今すごくひどいこと言ってる。
違う、違うんだよ、本当は。
「トシミは遠距離になるの嫌?」
「あはは、そりゃーね」
「そっか」
脳みそを通さずに、わたしの口からは嫌な言葉がどんどん発されてしまっていた。
だって、先生と阿部くんはきっと両思いだったのだ。
でもわたしも阿部くんが好き。
わたしはどうしたら良いのだろう。

