それから少しだけ荷物の整理をした後、休憩タイムへ。
おばあさんからの差し入れのゼリーを2人で食べた。
まだ日は短く、外は次第に暗くなっていく。
電気をつけて、障子を閉めようとすると、クロが縁側から部屋の中に戻ってきた。
しばらくすると「にゃーん」と鳴いて襖をかきはじめたため、阿部くんは襖を開けて、クロを廊下に逃がしてあげていた。
彼は足元の雑誌の束を少し移動させ、わたしのすぐ横に座った。
今日はまだぎゅっとしたりキスしたりしていなかったこともあり、急にわたしの鼓動は速くなった。
「トシミ、今日はありがとね。本当はこんな手伝いさせたくなかったんだけど」
「ね。片付け楽しかったけど、せーちゃんがここからいなくなる手助けしてるみたいで、ちょっと複雑だった」
そう言うと、彼は寂しそうな笑顔を浮かべた後、わたしに優しいキスをした。
「向こう戻るの、嫌だなぁ」
「うん。わたしもこのダンボールに入っちゃおうかな」
「あはは、あの大きなカバンの中でもいいよ」
「わたしはエ○パー伊東か!」
2人でそんなことを話して、笑い合っていると、急に阿部くんは真面目な顔になった。
そして、再びキスされる。
わたしも彼の首に腕を回し、それを受け入れる。
彼も唇を重ねながら、わたしの後頭部をくしゃくしゃに撫でる。
「……っ」
何度もそうやっているうちに、唇で唇をこじ開けられた。
彼の温かい舌が滑りこんできた。
体の芯の部分がじわじわと熱を帯び出す。
このまま全てを忘れるくらい、めちゃくちゃにされたいと思った。
「いい?」
目の前で彼がぼそりとした声で聞く。
「うん……とか言うの、恥ずかしいよ」
そう言って目を伏せると、
「じゃ脱いじゃいましょうか」
と彼が可愛く囁いたため、無言でわたしはバンザイをした。
阿部くんの手がわたしのパーカーの裾を持ちあげる。
しかし、その瞬間、ガサッ、とポケットの中で紙がこすれる音が鳴った。
急に嫌な方の心臓音がどくんと響く。
それは吐き気をもよおしそうになるほど、体中をえぐった。
わたしは慌てて、
「ごめんわたし女の子の日だった!」
と言って、その手を制した。
「そうなんだ……っておれこそごめんね! 急にエンジンかかっちゃった。ちょっと落ち着きまーす」
彼は顔を赤くしながら後ろを向いた。
――よかった。何もバレていないようだ。

