『阿部くん
大丈夫?いろいろ大変だったでしょ?
いつかこうなるかもって思ってたけど、
すごいことになっちゃったね、本当にごめんね。
きっと噂もすぐ収まるだろうから・・・。
(実は私、彼氏がいるんだ・・・。
だましてるつもりはなかったんだけど、
ごめんなさい。)
だから、阿部くんは私のことなんか全部忘れて、
良い青春&良い高校生活を送るのだよ!バイバイ。
元先生より』
「ふぅー……」
わたしは深くため息を吐きながら、便箋を封の中に戻した。
イギリス海岸で聞いていた内容と一緒だったため、安心した。
その時、彼らしき足音が近づいてきていることに気がついた。
――やばい!
わたしは急いで缶カンを閉じ、もとの引き出しの奥に入れた。
しかし――
「……はっ!」
畳の上に残っていたのは、何と、さっきの手紙だった。
どうしよう、これ入れ忘れちゃった!
何でこんな時にテンパってるんだわたしは!!
仕方ない……。
後でこっそり戻しておこう。
襖が開くと同時に、わたしは自分のパーカーの大きなポケットにその手紙を入れた。
「ごめんね、長話になっちゃって。って何読んでるの?」
「この中にスターフィッシュが載ってる雑誌見つけて、読んでた~」
わたしはさっきの雑誌を片手に、ちゃぶ台横に無造作に重ねられている雑誌の山を指差した。
「あ、その雑誌、おれ無くしちゃったと思ってたけど、なーんだ、そこにあったんだー!」

