「あー! しんみりする前に、さっさと始めましょー!」
わたしはパーカーの袖をまくり、気合いを入れた。
ユカチンの部屋を片付けたわたしの整理整頓力があれば、彼の荷物整理くらいちょちょいで終わるはず。
「わざわざありがとね。よし、やるかー」
色々と悩むことはあるけど、
久々の彼との2人っきりの空間は、わたしの胸をときめかせる。
やはり、わたしは阿部くんが大好きであることを実感し、複雑な気持ちにもなるけど。
「パンツはこうやってまとめたらいい?」
「わー、そこは自分でやるよ!」
だべりながら、服をたたんだり、雑誌やCDをまとめたり。
「せーちゃん、いつまでマンガ読んでるの~?」
「あと少し、これ最後まで読んでなくて」
彼が住んでいるこの部屋から生活感を無くす作業に、わたしたちは笑いながら取り組んでいる。
途中、おばあさんが部屋に来て、メンコちゃんゼリーを一袋差し入れしてくれた。
その後、公民館で集まりがあるらしく、軽トラで出かけていった。
ブー、ブー。
畳の上、阿部くんのスマホが振動する。
「あ、親から電話だ。ちょっと休んでて。適当にマンガとか読んでていいし」
そう言って、阿部くんはスマホを持って、廊下に出た。
襖越しに阿部くんの話し声が聞こえる。
窓の外から、屋根からの水滴が雪の上の水たまりに落ちる音が響いてくる。
クロは微動だにせず、その様子を眺めているようだ。
うーん。長くなりそうだな。
何か雑誌でも読もうかな。
わたしは整理されつつある部屋の中を見まわした。
「ん?」
開けられた押し入れの奥、プラスチックの収納ケースが目に入る。
引き出しは開けられたままになっていて、そこからもノートやら雑誌が顔を出していた。

