朝食会場で食べたのは、
いろんな種類のおしんこ、筋子おろしに、お洒落な香りがする鮭のホイル焼き。
その他にも、複数の小鉢と、しじみの味噌汁。
「もう全部がこの白いご飯のためにあるようなもんだね」
艶やかな白ご飯は、それ単体だけでもほんのり甘くて美味しい。
そして、おかずと一緒に口に入れると、
お米の味わいがさらに増幅して、ほっぺたが落ちそうになるほどだった。
「おれご飯おかわりしようかな」
「あ、わたしもー」
前にユカチンが、
家族や友達など関係が消えないものをご飯などの主食で、
彼氏や恋愛はおいしい味だって例えていたけど、
阿部くんは一生食べ続けていく主食でもあり、彩りを与えてくれるおいしい味でもあるような気がした。
ふう、お腹いっぱい。
幸せ気分で食後のお茶を飲んでいると、阿部くんは気まずそうに口を開いた。
「トシミ、先に言っておくけど、これは本来の意味だから。……ごめんね」
「え? 何急に」
「部屋戻ったら鏡見ておいで」
……はい?
何だろう。
顔に何かついてるのかなと思い、おしぼりで口まわりを丁寧に拭いたけど――。
「ちょっと、これ……。せーちゃんのばかー!」

