仕方がないのでわたしはゆっくりと阿部くんの陣地――布団の上に侵入した。
テレビもちょうど静かなシーンを映し出しているようで、
浴衣や布団の布がこすれる音だけが聞こえてくる。
ごくり、と喉が鳴った。
恥ずかしいし緊張はするけど、
実は、わたしも彼に近づきたくなっていた。
話をしているうちに、体の中はどんどん熱くなってきて、阿部くんの体温に触れたくなっていた。触れられたかった。
いつの間にか阿部くんも真剣な顔になっていた。
わたしは、正座のまま彼に顔を近づける。
「ぶっちゅーじゃなくて、普通のちゅーでいいですか?」
そう聞くと、彼は軽く笑ってから、もう一度真顔に戻り、うん、と頷いた。
心臓の音が体中に響くほどに暴れまわっている。
でも頑張って自分を落ち着かせながら、少し右に顔を傾けて、自分の唇を彼のにくっつけた。
ふわりと離した瞬間、わたしの唇を追うように彼がキスを返す。
そして、何度か唇を重ねた後、ぐっと手を引かれ、そのまま布団に押し倒された。
「ごめんね」
押さえつけたわたしの手首をぎゅっと握り、阿部くんはそうつぶやいた。
謝らないでよ、と言いかけたわたしの唇はもちろん彼の唇にふさがれた。

