「おれは、もう順位つけるの難しいけど、とりあえず3位は盛岡のデートかなぁ」
「ちょ、それわたしの黒歴史……」
「何で何で? トシミがすごい積極的で、おれびっくりしたし。特に電車でポケットに手入れてきた時が一番やばかった」
「わあああ。普段あんなんできないって」
恥ずかしさのあまり、枕を手にしてそこに顔をうずめた。
「って、なんでわたしばっかりこんなに照れてるのさ。せーちゃんはいちいち落ち着きすぎ」
「うーん。おれも結構ドキドキしてるんだけどなぁ」
「じゃあ、わたしの2位はそのデートの後、壁画の前で『も~~~~~!』ってせーちゃんが叫んだやつ。まじエモーショナルだった!」
「ちょっ! それは……」
阿部くんはお茶をすすった後、少し咳き込んでいた。
よし、少しテンパってる様子が見える。
「エモいせーちゃん、超レアだよね。付き合った時の『わ~~~~~!』も入れてまだ2回しか見れてないもん」
わたしは、2つの布団の境界線に近づいて、彼の顔をのぞき込んだ。
すると、彼は少し姿勢をくずしながら、わたしをちらっと見る。
それから恥ずかしそうに目をそらした。
「あれは……よく正月にテレビでやってる仮装大賞の得点みたいなもん。デデデデデって点が上がっていって、満点になっちゃった感じ? もうどうしようー! みたいな」
「ふーん。じゃ今は何点くらい?」
「20点中17点くらい? だいぶいい感じ。さっきトシミの胸元もちらっと見えたし」
「は!?」
さっき阿部くんの顔をのぞきこんだ時、
わたしの浴衣がちょっとずれて、胸元が少し広めに開いていたらしい。
「ていっ!」
「いてっ!」
わたしは枕を阿部くんの顔面めがけて投げて、その隙に浴衣をせっせと直した。
阿部くんはまともに喰らってしまったらしく、いててて、と顔を押さえていた。

