僕の幸せは、星をめぐるように。


外では、ほんの少しの雪の粒が静かに舞っている。


屋根と背の低い壁に覆われているこの足湯。

ヒノキでできた浴槽に雪が2、3粒落ちて、お湯に溶け込んでいった。


体の表面は冷えてきたけど、足元のぬくもりのおかげで体の中はぽかぽかだった。


「ま、付き合う前からいろいろあったしね。いろいろね」

ちょっとイヤミっぽくそう言って、阿部くんの肩をひじで突っつくと、

「そうだよね。いろいろね。チャリ2ケツした時、急に後ろからぎゅっと抱きしめてきたりね」

と言って、彼もお湯の中でわたしの足を突っついた。


「それ文化祭の時だよね? わ、恥ずかしいんだけど! だって、あれは……」

「あれは結構やばいよ。すげードキッとしたもん」


阿部くんはそのまま足を揺らし、お湯に波紋を作りながらそう言った。


そうか、あの時そんなに驚いてたんだ。

阿部くん普通にチャリこいでたし、全然分からなかったんだけど。


「……せーちゃんだってあの後チューしてきたじゃん。あれは反則ですー」

とわたしが口を尖らせながら言うと、

「すんません。あれはもう体が自然に動いちゃいました」

と彼はぼそりと謝った後、少し耳を赤くさせていた。


「ねーねーちなみに他にもそーゆーことあった?」


「うん、いろいろあったと思う。トシミは?」


「ありまくりだし! あ、じゃあお互いドキッとした瞬間ベスト3発表しよーよ」


「いいけどちょっと考えさせて。発表はご飯食べた後くらいでもいい?」


「おっけー。あ、せっかくだし今言ったやつ以外ね!」


うーむ。ベスト3かぁ。


わたしたち、付き合う前から色々ありすぎて、

でも、今でも1つ1つ思い出すたびにドキドキしてしまう。

そして、これからもっと楽しいことや嬉しいことがあるんだろう。


会話の内容がいつもよりバカップルっぽくなってきた気がするけど、普段とは違う場所や景色のせいってことで。