「ごめん、おまたせー」
念入りに体を洗ったため、意外と時間がかかってしまった。
「ううん。いいお湯だったね~」
大浴場の入り口前にあるソファーで、阿部くんはスマホゲーをしながら待っていた。
てか、阿部くん×浴衣!
彼の薄めの顔立ち、細身の体と、浴衣の涼しげな雰囲気がとても似合っている。
襟元からは綺麗な鎖骨が顔をのぞかせていてセクシーだし、
洗ったばかりでいつもよりふわっとした髪の毛も可愛い。
その眩しさにくらくらしていると、
「浴衣似合ってる。かわいい」
と彼は言い、わたしの手を引いて歩き出した。
うわあああ、
温泉でのぼせているのもあって、鼻血ブシャーしちゃいそう!
「せーちゃんこそ似合ってるよ。何かセクシー!」
「そう? 浴衣っておれみたいなのよりも、もっと肉づきいい人の方が似合うと思うんだよねー」
「なんすか、それ。イヤミ?」
「違うってー。てか別にトシミ太ってないじゃん」
夜ごはんまでまだ時間があったので、中庭を散歩した後、
その景色に面した場所にある足湯につかった。
松の木も小川も花壇も全てやわらかそうな雪に包まれていた。
「はぁ~いいねぇ~癒されますね~」
外の空気が冷えている分、お湯に足を入れるとじわりと温かくなって気持ちが良かった。
「そうですねぇ~あったかいですね~」
すぐ隣、阿部くんもわたしの口調を真似してそう言った。
正面では大学生らしきカップルが、キャピキャピと楽しそうに会話をしている。
それに比べてわたしたちって……。
「あのさ、わたしたちって付き合ってまだ2ヶ月経ってないよね?」
「うん」
「何かもうおばあちゃんカップルみたいな感じじゃない?」
「あはは、そうかなぁ。でもトシミとは何か付き合い長い感じする」
ちょうどそのカップルが出て行ったため、
ここはわたしたち2人だけの空間になった。

