☆ ★ ☆
高速道路を北へ進むごとに、景色に少しずつ雪が混ざっていく。
旅館に着いた頃には、あたり一面が薄い白に包まれていた。
「どうぞごゆっくり~」
仲居さんが丁寧に挨拶をした後、部屋から出て行った。
「わ~、いい感じの雰囲気ー」
通されたのは、12畳くらいの和室。
床の間には梅の花が描かれた掛け軸と、高そうな壺がある。
障子を開けると、窓の外には綺麗な雪景色が広がっていた。
「やっと静かになったね」
「あはは、わたしまだあのリズムが頭の中で鳴ってる……」
カヨコさんの車の中ではずっと大音量のレゲエが流れていた。
もちろんカヨコさんのお友達もカヨコさん同様に個性的なお方で、
「せーいっつぁん頑張れ! あ、やった後、寝る時はちゃんと浴衣着た方がいいよ、底冷えすっから!」
などと散々煽りながら、わたしたちを見送った。
確かにこんなファンキーな年上女性陣に囲まれて育ってきたら、
自然に女の子慣れするんだろうな。
お茶菓子を食べて少し落ち着いてから、温泉へ。
「鍵はおれ持っとくね」とか、
「5時半にここで待ち合わせでー」という、
何気ない会話が全部新鮮で、嬉しくて、
夢のようだった。

