「でも……トキさん、体調は大丈夫なの?」
「ん、時々病院行ってるけど、畑に立つのには問題ないみたい」
「ならいいんだけど……」
――ん?
トキさん、って阿部くんのおばあさんのことだ。
去年腰を悪くしていたし、あまり具合がよろしくないのだろうか。
再び不安が心に生じたけど、そろそろ戻らないと不自然かなと思い、
足音をたてて、今から戻りますよアピールをしてから、わたしはリビングに戻った。
それからは、阿部くんの昔の話をお父さんから聞いたり、
カヨコさんとスノボやメイクの話をしたりしながら、楽しい時間を過ごした。
「今日トシミちゃん泊まっていけばいーのにー」
「あ、ありがとうございます。でもご飯も頂いて、ご迷惑かけるのも申し訳ないので……」
夜8時頃。カヨコさんが車で駅まで送ってくれた。
「トシミ、気をつけてね。電車1人で乗れそう?」
一緒に乗ってきた阿部くんも、車の窓を開けてわたしに声をかける。
「もう、田舎者扱いしないでよー! あ、今日はありがとうございました!」
慌てて頭を下げると、阿部くんとほんの少し似た笑顔で、運転席にいるお姉さんも笑っていた。
とうとう明日は、わたしと阿部くん2人きりでの宿泊。
心の中でドンドコと激しいお祭り騒ぎを繰り広げながら、
わたしは大宮のイトコのもとへと向かった。
しかし、その日の晩は、最新のオタ事情と男の子同士の恋愛について熱く語られることに。
そして、『銀河鉄道の夜』ってどんな話だったっけ? と聞いてみると、なぜか鼻息荒く語りだしたため、ソッコーで爆睡しておいた。
(絶対、変な視点で読んでるに違いない! いや~!)

