「いらっしゃい。遠いとこからありがと……「わー可愛いじゃん! せーいち、あんたやっぱりやるね!」
小柄な阿部くんのお母さんの言葉を遮り、20歳前後くらいの女性が大声でわたしたちを迎えてくれた。
たぶんこの方が、阿部くんの5つ年上のお姉さんだろう。
比較的新しい住宅が広がる一画。
2階建てのごくごく普通の一軒家だった。
お土産に南部せんべいと金婚漬(地元のつけもの)を渡すと、2人とも喜んでくれた。
お父さんはまだ出かけているらしい。
「じゃあ明日は10時ごろに駅で待ち合わせねー!」
まずは阿部くんの部屋にて、
阿部くんのお姉さん――カヨコさんが明日の予定を話してくれた。
カヨコさんは、ところどころに金が混ざったロングヘアに、右サイドはコーンロウ。
メイクも濃く、アイラインが鋭く引かれた目が格好良い。
都会のカッコよい女性を間近にすると、
クラスのイケてる女子たちなんて、所詮せまい田舎のクラス内でイキっているだけのように思えてしまう。
カヨコさんが、友達の実家の温泉旅館を予約してくれたらしい。
ご飯が美味しくて、温泉も広くて、景色も良くて、すごく良いところ、とのこと。
わたしの地元も温泉街として有名なため、
阿部くんは千葉にある夢の国の方が良かったかな~、なんて悩んでいたけど、
わたしは地元以外の温泉街に行ったことがなかったので、楽しみだった。
阿部くん両親には、わたしと阿部くん、カヨコさん&カヨコさんの友達で、
4人部屋に泊まると言っているそう。
しかし実際には、わたしたちを送り届けた後、カヨコさんたちはそのまま泊まりでスノボに行くとのこと。
わ、これって本当に阿部くんと2人で泊まるパターンじゃないっすか!

